「Keynote」の名を聞いたとき、「プレゼンテーションソフト」と即座に答えられるビジネスマンは、多くはないかもしれません。Keynoteは、iPhoneやMacを世に送り出したApple社が開発したプレゼンテーションソフトです。
デザインや印刷など、Macを多く利用する業界ではよく使われていますが、Microsoft社のWindowsOSが圧倒的シェアを占めるビジネスの世界では同社の「PowerPoint」に遅れをとっているのが現状です。
この2つのソフトはどのように違うのでしょうか。そして実のところはどちらが使い勝手がよいのでしょうか。今回は双方のメリットとデメリットをあげて深堀していきましょう。
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「Keynote」と「PowerPoint」どちらを使うべきか?Keynoteの特徴
まずは「Keynote」からみていきましょう。
「Keynote」はApple社からMac用のプレゼンテーションソフトとして、2003年にリリースされ、2011年にはiPhoneやiPadなどのiOSデバイスでの対応も開始されました。
Microsoft Officeと同じように、文章作成ソフト「Pages」、表計算ソフト「Numbers」とセットで「iWork」としてもリリースされており、2018年現在の最新バージョンは8.1。MacOSX 10.12以降とiOS11以降に対応しています。
Mac・iOS用のみでWindows用はリリースされていませんが、iCloudを介することでWindowsでも利用することができるようになっています。
メリット①リーズナブルさ
Keynoteの最大のメリットはこの「リーズナブルさ」かもしれません。
このKeynoteを含め、文章作成ソフト「Pages」、表計算ソフト「Numbers」の「iWork」は2018年現在で無料となっています。
一方のPowerPointですが、2018年現在の最新バージョン「2016」の単体ダウンロード版が15,984円(税込)、1年間使い放題でPowerPoint以外にもWord、Excel、OneNoteなどが利用できる「Office365」で12,744円(税込)となっています。
どちらのパターンを選ぶにしても12,000円以上の開きがあります。
メリット②直感的な操作が可能
それぞれの操作画面をタイトル下に載せましたが、パッとみた感じで、Keynoteの画面のシンプルさがわかると思います。
「Appleの哲学」ともいえるでしょうか。旧MacOS時代からApple社のソフトウェアは、あくまで直感的・わかりやすい操作性という基本軸でつくられてきました。
Keynoteにもそれは受け継がれており、使う機能を厳選したうえで、簡単にプレゼンテーション資料を作成できるようになっています。
メリット③美しいグラフィック・アニメーション
Macは昔から「グラフィックに強い」との定評がありました。その遺伝子も当然ながら盛り込まれています。
3D効果を駆使したアニメーションなどは圧巻で、この面ではPowerPointを完全に凌駕しています。
グラフィックとアニメーションの動き、スライドの切り替わりなどについては、特に講演やセミナーでの使用に効果を発揮し、プレゼンを受ける側に対し強い印象を残すものとなっています。
メリット④PC以外のタブレットでの操作も容易
メリット②ともリンクしますが、直感的な操作が可能、ということは、iPadなどのタブレットにおける操作もしやすいということになります。
タブレットの操作は基本指やスタイラスペンを利用して操作します。
iPadではApple Pencilと組み合わせて使うことにより、まるでノートに手書きするような感覚でプレゼン資料を作成することが可能となっています。
デメリット①印刷との相性が悪い
Keynoteのデメリットとして、もっとも大きいのは「印刷との相性の悪さ」でしょう。
講演において、見るものを深く惹きつけるようなスライドを映し出すことができるKeynoteですが、それらを印刷物として出力しようとすると、かなり違ったデザインとなって印刷されることが多々報告されています。
もともとはセミナーや講演でスクリーンに投影することを前提につくられているともいわれており、レジュメなどの資料作成には向いていないといえます。
デメリット②クリップアートがない
3Dやアニメーションに強いKeynoteですが、2D、特に図形やアイコンは最低限のものしか用意されていません。クリップアートに至っては、自分でフリー素材などから探してこなくてはなりません。
それなりに豊富に用意されているPowerPointに慣れてしまうと、この点は非常に面倒に感じると思います。
デメリット③日本はwindowsユーザーが大半なため、プレゼン会場のPCを利用しにくい
次の章でも解説しますが、KeynoteとPowerPointのファイルは互換性が完全ではありません。USBメモリ入れたデータだけ持ち、肝心のMacbookなどを忘れてしまったりしたら大変悲惨なことになります。
日本ではWindowsユーザーが大半を占めていることもあり、会場のプロジェクターやそれに接続するPCはWindows仕様になっていることが多くなっています。
やむなくWindowsPCでファイルを開いてみようとしたら……。結局開くことができず、会場で大急ぎで資料を作り直す羽目になったという話をよく聞きます。
Macbookを持参し、さらにプロジェクターがMac対応になっていればまだ問題ありませんが、そうでない場合には事前に期待していたプレゼン効果は半減してしまうことになりかねません。
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「Keynote」と「PowerPoint」どちらを使うべきか?PowerPointの特徴
「PowerPoint」はいわずとしれたMicrosoft社のプレゼンテーションソフトです。1987年のリリース以来、Windows版のみならず、Mac版、iOS版とプラットフォームを超えて販売されて続けています。
最新バージョンはWindows/Macが「2016」で、iOSが2.12.で、対応OSはWindows7 SP1以降とOSX 10.10以降、iOS10以降となっています。
ちなみに最初にリリースされた1.0はWindows向けでなくMacintosh向けにリリースされたもので、Windows版のリリース(当時のWindows3.0向け)は1998年の2.0からとなっています。
メリット①圧倒的ユーザー数(KeynoteとPowerPointの互換性は高くない)
最初に書いたように、ビジネスマンのほとんどは「プレゼンテーションソフト=PowerPoint」という認識を持っている、と思って間違いないでしょう。
それだけユーザー数が多いということは、PowerPointでファイルをつくっておけば問題ない、ということにつながります。
部署や会社の垣根を超えてのコラボでもこれは強力な効果を発揮し、ファイルの共有化、共同作業などもスムーズに進み、本来の業務に集中できる素地をつくることができます。
また、ユーザーの数が多ければそれだけ「ノウハウ」がたまることも期待できます。前述しましたとおり、KeynoteとPowerPointのファイル互換性は高くはありません。
基本的にPowerPointデーターはKeynoteでそのまま開いて編集できますが、逆にKeynoteデータはPowerPointで開くことができません(対処方法については次々章で解説します)。
この「一方通行」がビジネスユーザーのKeynote乗り換えを抑制してしまっている一因になっている感も否めないところはあります。
メリット②すべてを網羅する機能の充足度
「プレゼン資料作成はPowerPoint一本ですべて完結する」といわれるぐらい、PowerPointの機能はラインナップに富んでいます。
「グラフィックの美しさ」では後塵を取ったPowerPointですが、図形作成能力や文字修飾、各種効果の種類についてはKeynoteを圧倒しています。各種テンプレートの数や種類についてもPowerPointに軍配があがります。
本来はプレゼン用のソフトですが、Adobe Illustratorのようなドローソフトとして使うユーザーも少なくないぐらいその機能の充足度には高いものがあります。
デメリット①価格の高さ
無料であるKeynoteに比べると、12,000円以上の差というのはかなり大きなものとなります。
きちんとコストパフォーマンスを考慮しないと非常に高い買い物となってしまうことから、おのずと導入のハードルは高くなりがちです。
デメリット②使いこなすには慣れが必要
機能の豊富さはメリットでもありますが、それらを組み合わせて「完成形」にするにはそれなりの習熟と訓練が必要になります。
直感的に操作できて、比較的早く使いこなすことができるようになるKeynoteに比べると、「時間のロス」というデメリットとなります。
PowerPointが実はMac版からスタートしたと書きましたが、それゆえか、他のMicrosoftのオフィス系ソフトに比べると多少異色のところが見られます。
ドラッグアンドドロップでの画像貼り付けなど、Macの持っていた直感的な操作(使用感)に近いものもところどころに見受けられます。
Excelも元々はMac版が先行してリリースされていた経緯がありますが、それでもかなり形式的・筋道だてた操作が多く、いかにも「Office系」という感じは否めません。
このようなOffice系の操作に慣れてしまったビジネスユーザーからすると、Excelのようにはマスターすることがなかなか、といったところなのかもしれません。
次ページ:WindowsでKeynoteを利用するには
WindowsでKeynoteを利用するには
基本的にKeynoteはMac用のソフトとなっていますが、Apple社のクラウドサービス「iCloud」を介することでWindows環境下でも利用できます。
一般的なプレゼン資料はPowerPoint一本あれば作成できますが、Keynoteのグラフィックやユーザーインターフェイスなどに魅了されたWindowsユーザーも多く、「WindowsでのKeynoteデータ作成」が求められていました。
また、iCloudを介することでKeynoteデータをPowerPoint形式にすることなくやり取りすることが可能となります。
利用するには「AppleID」が必要となります。
1.iCloudのサインイン画面を開く
①iCloudのサイトにアクセスします。
②既にAppleIDを持っている方はAppleIDとパスワードを入力します。
未取得の方は、「Apple IDまたはパスワードをお忘れですか?」の下に「Apple IDを作成」と表示されるのでそれをクリックします。
2.AppleIDを作成する
③Apple ID作成画面が表示されます。各種情報を入力したら「次に進む」をクリックします。
④画面が変わり、確認コード(6桁)入力用の画面が表示されます。
⑤Apple IDに登録したメールアドレスに、確認コードが記されたAppleからのメールが届きます。
⑥メールに記されているコードを入力したら「確認」をクリックします。
⑦「利用規約」が表示されます。確認したら「同意する」をクリックします。
⑧Apple IDが作成され、初期画面が表示されます。
3.「iCloudを使って開始」をクリック
⑨初期画面中央に「iCloudを使って開始」と表示されているので、それをクリックします。
⑩Keynoteをはじめ、各種ツールが表示されます。Keynoteのアイコンをクリックして立ち上げます。
⑪「Keynoteへようこそ」画面が表示されます。「次に進む」をクリックします。
⑫「はじめましょう」画面が表示されます。「Keynoteを使用」ボタンをクリックすると、Keynoteの使い方ガイドとともに画面が表示されます。
WindowsでKeynoteを利用する場合に制限される機能
iCloudを介することでWindowsでもKeynoteを利用できることはおわかりいただけたと思いますが、実はそれでも完全ではないのです。
というのもWindowsでは機能的に制限されるところがあるのです。
かなりの部分でMacとの垣根は取り払われてはいるのですが、それでもなお、WindowsでKeynoteを利用する場合に注意しなければいけないことについてご紹介します。
Keynote→PowerPointへの互換性
既に書いたとおり、PowerPointデータをKeynoteで開く場合、ファイル変換なしでそのまま開き編集することができますが、逆はできません。
KeynoteでPowerPoint形式のファイル(拡張子:.ppt・.pptx)に書き出してからPowerPointで開く形になります。
しかし、KeynoteがMacソフトであるがゆえ、100%の互換性は確保できません。一番の問題は「フォント環境の違い」です。
Macの標準フォントは「ヒラギノ明朝・ゴシック」、Windowsは「MS明朝・ゴシック」です。それぞれのフォントは自動的に変換されてしまい、その結果デザインが崩れることがあります。
これらはどうしようもなく、改めて修正作業を行うしかないようです。
一部のアニメーション機能
文字をクリックすると動き出すなど、スライド内のアニメーションについては、iCloud経由でのKeynote利用をもってしても使うことができなものがあります。
また、PowerPointで設定したアニメーションについても、搭載されているアニメーションが違うため自動的に変更されてしまいます。
まとめ
KeynoteとPowerPointについて、メリット・デメリットあげながら見てきましたが、
①グラフィック面で強いKeynoteは、講演会やセミナーでインパクトあるプレゼンテーションを行うのに向いている。②レジュメ、企画書など、紙媒体配布を前提にするならPowerPointの方が向いている。
と「棲み分け」にも似ていますが、大きく分けることができると思います。
ただ、実際のビジネス現場で異なる2つのソフトを併用することは、コスト・効率の面でも問題があります。
これまでのプレゼンの実績などを勘案し、①と②のどちらに軸が置かれているのかで選んでみたらいいのではないかと思います。
両ソフトともこれからも進化していくと思いますが、今回の記事を参考にして、よりよいプレゼンテーションソフトを選ばれることを、よりよいプレゼン資料作成ができるようになることを、願ってやみません。
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